仕入れの怖さ…
皆様、最近は年末の忙しさで、更新が滞り気味ですいません。
今回は、私がカーショップに勤めていた時代に体験した、
「仕入れの怖さ」について、記事にしようと思います。
中古車という商品は、どれだけ注意深く査定しても、見抜けない穴があるものなのです。
まず、人が使った商品であること。中古商品を扱う業態は他にもありますが、こと車に於いては、何百、何千の部品が組み合わさって構成された工業製品。その部品の隅々までチェックする事は出来ません。
若い方が査定すると、とにかく「事故が無いか」ばかりを気にして、ボディを斜めにすかしてばかり見ます。査定とは、「事故を見破る事」だと認識している様子。
確かに、事故が有るか無いかで査定の金額が大きく変わります。中古車には、車種やグレードによって、流通する上での「価格相場」があります。相場価格との兼ね合いで、いくらまでなら仕入れ出来る、頑張って買い取り出来る、価格を決めているのです。
大手の買い取り店も、また査定士も、
この「価格相場」にとらわれすぎ
だと思うのですが。
商売が成り立つのなら、可能な限りお客様の喜ぶ価格で車を買ってあげればいいのに。ちょっとでも相場より高ければ、
「うちはここまでしか出せません」
と言うのです。
前置きが長くなりましたが、私がカーショップ時代、ある先輩がいました。私より3ヵ月早く入社しただけなのに、よく偉そうに怒鳴られました。「目の上のタンコブ」、そんな先輩でした。社長や店長に対して非常に上手く、まだ若くて不器用な私は、よく踏み台にされました…。これ見よがしに私の失敗を吊し上げ、さも自分が助けてやったのだというような。
そんな先輩が、ある下取りで失敗したのです。
下取りに「アルトワークス」が来ました。平成7年、6万キロ。AT 車で、車検は半年残でした。ボンネットを開けて、フロント左回りの事故を見つけました。それもあって、相場より少し安く下取りました。お客様には、次の車も買ってもらっているので、利益も取れて、良い商談でした。
すると、お客様を見送って、下取り車を見た店長が言いました。
「おい、〇〇君、ちょっと来てくれ!この車、アルトワークスやんな!?」
「はい、そうですけど。」
「じゃあなんで、ターボがないねん?タービンもインタークーラーも無いやんか!」
「えっ、そうなんですか?」
そう、この車、「アルトワークス仕様」のアルトだったのです!
アルトの、ドアから前のフェンダー、ボンネット、バンパーなどをアルトワークスの物へ移植し、後はウィング、リアバンパーもワークスの物に交換。これをすると、「事故大」の扱いになり、査定基準はずいぶん下がります。しかも、実車はアルトワークスではなく、単なるアルトなので、相場も全然違います。これは痛い。相場より、10~15万高く下取りしています。
これには社長も怒りました。なぜなら、ボンネットを開けて見ているのに、ターボやインタークーラーの有無には気づかなかった。ですが、ボンネットにインタークーラーの吸い込み口はあります。「飾り」なのか!?
先輩は、「アルトワークス」の相場を調べ、事故の有無を確認して(事故小だと査定し)、下取り価格を出したのです。しかし、1つ言うと、先輩は車の知識が乏しかった。そこは私の方が勝っている自信がありました。
ここで私はどうしたか?もちろん、普段散々貶められているので、この失敗を吊し上げて先輩を攻撃する事も出来ました。けど、しませんでした。逆に先輩をなだめる態度をとりました。
何故か?私にとっても良い勉強になったので。中古車の査定とは、本当に怖いものだという事が分かりました。
「思い込み」もあったと思いますが、見た目にアルトワークスだったら、疑いませんよね?私もやりかねない失敗でした。
中古車の査定とは、事故の有無だけではないのです。もしエンジンが換装されていたら、もしATが寿命だったら、もし駆動系や足回りが壊れていたら…。
整備の知識、車種やグレードの知識、鈑金塗装の知識すら必要になってきます。
「ネットですぐに買い取り金額を提示」
結局、本当の査定価格が分からない事が、
理解出来ますよね?