2カ月でなんと骨折2回!崖っぷちカーセールスライターの左手ブログ!

もう、車業界に身を置いて、22年になります。「カーセールスライター」というのを最近始めて、もう20数件のお仕事をさせて頂きました。ですが、7月に右足かかと粉砕骨折、10月1日に右肘開放骨折。セールスライターであり、現職の職人でもあり、車業界20年にして最大のピンチを迎えた最近、始めたブログです。こののび太のような状況を笑い、車業界などの話しを中心に楽しんで下さい!

どれだけフォローし、どれだけ寄り添えるのか?

新年、明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願いします。皆様、精を出して車道楽に励みましょう!

 

今回のテーマは、「お客様をどれだけフォローし、どれだけ寄り添えるか?」ということです。

 

これは、業種業界に限ったことではありませんが、こと「中古車」に関しては、特に大切なテーマです。

 

やはり車というのは、家の次に高い商品。お客様にとっても、何年かに一度しか買えない高い物。その上「中古車」は、一度誰かが使って、販売店が再び扱った二次商品。いつ何時どんなトラブルが起きるか分かりません。

 

高いのに不確かな商品。「中古車」という物は、そういった商品です。まず、それが前提です。

 

私も、カーショップ時代は、色々ありました。こちらは関西の中心街ですが、わざわざ日本海の方面から来て頂いて、ご購入された

お客様がいました。しかし、納車の帰り、後少しで家に着くという場所で、車が止まりました。お客様は、今晩はここへ車を置いて、翌日近所の整備工場へ引き取りに来てもらおうかと言われました。

 

しかし私は、「今から引き取りにお伺いします」とお客様に言いました、、、

 

本日納車したばかりですし、多少年式の古い車でしたが、店のオリジナルのカスタムカーだったので、ちょっと高い車でした。

 

それをお客様は、雑誌を見て気に入って、わざわざ本州の反対側から買いに来て頂いたのです。更に納車の帰りに、トラブルで車が止まるという始末。デモカーでもあったので、店の恥です…。

 

ですので、「引き取りに行く」ことは当然でした。何の迷いもありません。

 

店を閉めた午後8時に、電話がありましたので、今からどれだけ急いで引き取りに行っても、現地到着は午後11時を過ぎます。ですが、お客様に「遅くなりますが必ず引き取りにお伺いします」と言って、代車を積んで積載車で現地に向かいました。予定通り、現地に着いたのが午後11時半。

 

「申し訳ありません、遅くなりました。納車当日にご迷惑をおかけしました」

 

「よく来てくれたね、〇〇さん。こんな遠い所まで」

 

「いえいえ、この車は当社のデモカーですし、お客様がこんなに遠い所から買いに来て頂いたんだと、私は感動しました。当社のオリジナルカーである以上、引き取りに来るのは当然です。それで、これは代車です」

 

「えっ、こんな遠い場所に代車まで貸してくれるの?」

 

「当社のお客様である以上、当然です。明日からの足にもお困りでしょうし。それで〇〇さん、この車の修理後の納車も、私がお伺いします。ここからご自宅は近いですよね?」

 

「えっ、代車貸してくれたんやから、俺が取りに行くよ!」

 

「いえ、デモカーを買って頂いた〇〇さんは当社でも特別なお客様です。納車当日のトラブルは当社の恥です。きっちり原因を調べて、修理し、納車に伺います。もうお客様に交通費を出してもらうのも申し訳ない」

 

「ホンマに!?有難う。さすが専門店。遠いけど、お宅でこの車を買って、正解やったわ。ホンで〇〇さん、晩飯食うた?」

 

「いえ、まだですけど…」

 

「こんな遅いのに、まだ晩飯食うてないの?俺に奢らして!そこやけど」

 

「いえいえ、悪いですよ、帰りがけどっかで食いますから」

 

「え~やんか、行こ行こ!」

 

半ば強引に、お客様に導かれて、吉野家に行きました。その晩の牛丼の味は、今でも忘れません。

 

さて、このデモカーの故障の原因は何だったのか?車は平成2年式の、ジムニーです。距離は80000km超え。現在はセルモーターは回りますが、エンジンが一向にかかりません。

 

翌日、当社のメカニックが、エンジンを分解して調べました。なんと、2番目のピストンが焼け付いていました、、、しかも、プラグが溶けて、半分ありません…。

 

エンジンは全くのどノーマル。何故こんな事が起こるのか?当社のメカニックと、メーカーのメカニックで協議した結果、

 

「燃料が希薄になり、内燃気室の異常高温によるプラグの焼け落ち、ピストンの焼け付きの結果、エンジンブローする」

 

というのが原因でした。この平成2年式のジムニーは、660cc になって初めての型式。「1型」です。現在はありませんが、当時はまだ燃料噴出がインジェクション形式でも、数段階のパターンしかありませんでした。回転数に応じて燃料噴出を制御していたので、頻繁にレッドゾーン近辺まで引っ張る運転をした場合、一時的に燃料が希薄になる。高回転を維持した場合でも、希薄になりやすい。この型式は、そういった癖があるのです。

 

結果、異常高温になりやすい2番目のピストンのプラグが焼け落ち、ピストンが焼け付く。エンジンの回転がロックされ、エンジンブローとなるのです…。

 

メーカーのスズキディーラー側も、こういったトラブルは、この型のジムニーでは初めてだった様です。「勉強になりました」と、言われました。

 

では、原因が分かった所で、修理です。

まずはエンジンのオーバーホール。焼け付いたので、大きいピストンに交換する事にしました。エンジンブロックもそれに合わせてボーリング加工。勘の良い方は気付きましたか?

 

そう、「ボアアップ」です。

 

排気量を720ccにボアアップしました。それに応じて、ヘッドガスケット、ヘッドカバーも新調しました。

 

約2週間後、お客様に納車にお伺いしました。ボアアップされたエンジンに、お客様は車のトルクが増え、速くなったと大変喜ばれました。私は、エンジンの「ならし運転」の説明をして、帰りました。原因を説明したら、後日「燃調コントローラー」を買いに来てくれました。

 

もしかしたら、お客様の「エンジンの回し過ぎ」かもしれません。ですが、はるばる遠方から来て頂いたお客様が、高速道路を使って帰られるのは容易に想像出来ます。お客様にしても、店のデモカーなので、古い車であっても、信頼していたはず。その分高い商品だったので。

 

要は、どれだけフォローし、どれだけお客様に寄り添えるか?

 

結果、私達も経費はかかりましたが、この型式独特の、重要なウィークポイントを発見出来たのです。しかも、ディーラーも知らなかった様な……。

 

私はお客様をフォローし、尽くしたことで、そんな財産を手に入れました。会社に戻り、この平成2年式の、1型のジムニーにお乗りのお客様には、「燃調コントローラー」をお勧めして、かなりの確率でご購入頂きました。

 

やはり、「中古車」という商品は、こういう事も多々あります。そこで、販売側が、どれだけ真剣にお客様をフォロー出来るか?親身になって寄り添えるか?だと思うのです。

 

「売ったらおしまい」ではないのです。

 

PS . このデモカーのお客様には、後日、奥様にもジムニーAT車を買って頂きました。夫婦でジムニー2台ですよ!素敵だと思いませんか?私のカーセールス史上、最も良いエピソードです。